2007-10-21

鶴は千年、亀は万年

これは、有名なことわざで「長寿で縁起がいいこと」の例えだそうです。
もともと、中国の古い哲学書に鶴は千年、亀は万年の寿命があるという記述があるようです。

ところが、これを連想させるような話が
インドの大叙事詩『マハーバーラタ』に書かれていますのでご紹介したいと思います。

『マハーバーラタ』の主人公であるパーンダヴァ5王子たちは、
森でマールカンデーヤという梵仙の話を聞いていました。
(このへんの詳しいいきさつは省略します。
興味がある方は、マハーバーラタ読んでください)
マールカンデーヤは、何千年もの長寿で世界のありとあらゆることを見てきた人です。

その非常に長寿なマールカンデーヤに、パーンダヴァたちは問います。
あなたより長寿のものがいるか、と。

そこで、梵仙は彼らに語り始めます。

かつて、天界に住んでいたインドラデュムナという王仙は、
前世の功徳の貯金残高0になったので地上に堕ちてきました。
そして、マールカンデーヤのところにきて、自分を知っているかと訊きました。

マールカンデーヤは、自分は知らないが
ヒマーラヤに住む梟なら知っているかもしれないと答えました。
そこで、王仙は馬に変身してマールカンデーヤを乗せ梟のところに行きました。

梟に会って、彼はまた尋ねました。
「私を知っていますか?」
ところが梟も彼を知りませんでした。

梟は、湖にいる鶴(サンスクリット語でバカという鳥)は自分より長生きだ、
と教えてくれたので王仙は、マールカンデーヤと梟を連れて、
その湖に行きました。

湖でその鶴(バカ)に会うことができたので彼らは、
「インドラデュムナ王を知っていますか?」とたずねたところ、
やはり彼も知りませんでした。

そこで、「あなたより長寿のものはいますか?」と訊きますと、
同じ湖に住む亀が、鶴より長生きであると教えてくれました。
彼なら知っているかもしれないと。

鶴は、亀を呼び出して「インドラデュムナ王を知っていますか?」
とたずねたところ、亀は突然涙を浮かべ、ふるえながら言いました。

その王は千回も火の祭祀を行った(善い行いをたくさんした)こと、
鶴と亀が住む湖は、彼がバラモンに与えた贈り物の牛たちが踏みしめてできたものであること、
そのおかげで、亀は湖に住んでいること(湖の名はインドラデュムナ湖といいます)
などを話しました。

と、そのとたんに天から声が聞こえました。
王よ、あなたは地上における名声を保っているので天界に行く資格がある。
そこで、王は梟とマールカンデーヤをふさわしい場所に戻してから、
天から差し向けられた車に乗って天界へもどって行きました。

ここでの教訓は、功徳ある行為が人の口に語られる限り、その人は天界にいる、
そして逆に不名誉の声が聞かれる限り、その者は最低の世界に堕ちている。
であるから、この世の人は法(ダルマ)に依り善行を積み邪悪な行為を捨てるべきである、
ということです。

実際生物学的に、亀は鶴より長生きなのかどうかは、わかりません。
どうなんでしょうね?
一般論として鶴は亀より長生きであることが古代から確認されていたのでしょうか?

「鶴は千年亀は万年」の諺の出所とされている中国の哲学書とマハーバーラタの挿話。
両者の間に関係があるのかないのか、も興味深いところです。
(勝手に私が面白がっているだけで、全然関係ないかもしれませんが)

参考文献:ちくま学芸文庫『原典訳マハーバーラタ4』上村勝彦訳
     (マハーバーラタ第3巻191章)

原典訳 マハーバーラタ〈4〉第3巻(179‐299章)・第4巻(1‐67章) (ちくま学芸文庫)原典訳 マハーバーラタ〈4〉第3巻(179‐299章)・第4巻(1‐67章) (ちくま学芸文庫)
(2002/07)
上村 勝彦

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この記事は、他ブログから引越してきました。

2007-10-21

猪姿のヴィシュヌ神「ヴァラーハ」

今年はいのしし年です。
インド神話の中にも、猪が登場する話があります。

varaha

gitagovinda


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昔々、ヒラニャアクシャという悪魔によって、
大地は拉致され海の底に沈められた。ヴィシュヌは猪の姿となり、
水中に飛び込んだ。
苦闘の末に、阻止しようとしたヒラニャアクシャを殺し、
大地を牙で持ち上げ海の底から救い出した。
そして、生命を維持できるように山々や大陸を形づくった。
このように、世界は再び新たなカルパ(劫)を生み出した。

これが、ヴィシュヌ十化身の第3番目、
猪の姿をした「ヴァラーハ」が世界を救い出した物語です。
このようにヴィシュヌ神は世界の危機を救うために、
さまざまな姿でこの世に現れると信じられています。
その数は、文献により、10だったり、22だったりしますが
十の化身が一番ポピュラーといえるでしょう。

ちなみに第7番目はラーマーヤナで有名なラーマ王子、
第8番目はクリシュナ、第9番目は「釈尊」ブッダとされており、
第10番目の白い馬に乗ったカルキは次に現れるといわれています。

ヴァラーハは、猪の頭と四臂を持つ人間の身体で表されます。4本の腕のうち2本はヴィシュヌの化身であることを示す「円盤(チャクラ)」と「法螺貝(シャンカ)」を持ち、他の2本には剣や棍棒、蓮華を持ったり、与願印の印相を示すのが典型的な姿であるようです

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