2007-10-21

インド的時間

よく「インド時間」なんて言いますよね。
インドでは平気で何時間も列車が遅れたり、人を待たせたりすると聞きます。
でも、彼らにすれば「No problem」なのだとか。

このインド的おおらかさは、悠久の昔から続くインド人の時間の観念が根本にあると考えます。

インドには「歴史」がありません。
いえ、正確に言うと西洋的観点からみた「歴史」という概念とは違うのです。

古代の2大叙事詩として有名な『マハー・パーラタ』や『ラーマーヤナ』は
「イティハーサ」とよばれています。
(内容はインドと関係ないけどこういうタイトルのマンガがありますね)

「イティハーサ」を梵英辞典で引くと次のような英単語に訳されています。
「talk, legend, tradition, history, traditional accounts of former events, heroic history
彼らにとっての歴史とは、太古の時代の英雄物語における「伝説」や
プラーナという「古譚」(古い物語)です。

インドの古典に関する書物などを読んでいると、成立年代が特定されていないものがほとんどです。
書かれている内容の比較や文法、その他周辺的要因から推定するしかないので
成立年代として記載されているものは軽く何百年もの幅があります。
お釈迦様の生没年も南伝と北伝では、100年くらいの開きがあります。

でも世界史の教科書に年代が書かれているよ、という意見があるかもしれません。
そこに記述されている古代インドに関する年代というのは、
ヨーロッパ人や中国人との関わりによって彼ら側の資料に記されたものから辿ったり、
推定したりして研究されたものなのです。
インド人自身の手によって特定された年代ではありません。

インド人の、特に村に住んでいる人やお年寄りなど、昔からの生活様式で暮らしている人たちは
自分の年齢を知りません。
無知で数を数えられないから、年齢を数えられないのではありません。
彼らにとって、年齢というのは意味が無いのです。

西洋人や、西洋的歴史観を植えつけられた日本人にとって、「時間」の流れは直線的です。
一番顕著なのは、歴史の年表ですね。
ある方向から別の方向へ、年代が直線的に進んでいきます。
しかも、不思議なのはすべての歴史がキリストの誕生、つまり紀元を基準に量られていることです。

歴史を遡るとき、最初降順に年数が減って行きますが、
紀元を境にまるで負の数のように紀元前として年数を逆行させていきます。
あたかも西暦0年以前は歴史の外といわんばかりに。
この数え方は17世紀にフランス人の神学者により提唱され、18世紀以降に一般化したそうです。
現在では当たり前のように受け入れていますが、非常に最近のことだったんですね。

話が逸れてしまいました。元に戻しますと、インド的時間の流れは円環的です。
創造と維持と破壊と再生を永遠に繰り返します。
私たち人間は、その輪の中に生まれ成長し老いて死にますが、
再びその輪のどこかに生まれ、死に、生まれ、死にを繰り返します。これが輪廻です。

インド人は魂の永遠性・不滅性を信じていますので、
この肉体での人生は一時的なものと知っています。
いつか肉体が古くなり時期が来れば離れ、また新しい身体を得られると思っているので
年齢に意味を見出さないのだそうです。
あるいは、この永遠のサイクルから脱出するために修行をし、解脱を目指す人もいます。

どこが始まりでどこが終わりかはインド人にとって意味がありません。
どの出来事が、何年何月に起こったとか、誰が何年何月に王位についたというような記録は
必要がないらしいのです。
確かにプララヤと呼ばれる「世界の帰滅の時」という概念もあります。
しかしまた世界は創造されるのです。

私たちは昼間活動をし、夜活動を止めて眠りにつきますが、
これで人生が終わってしまうとは誰も考えません。
また朝になれば目を覚まし活動を再開することを知っているからです。
しかし、死ぬことを恐れるのはそこですべてが消滅してしまうと考えるからです。

もし、命の永遠性を知っていれば、夜眠るがごとく死に望み、
また朝起きるように生まれることができるかもしれません。
世界の帰滅のときは、夜ブラフマン(梵天−宇宙創造の神)が眠るに入るだけで、
朝になればブラフマンが目覚めて世界を創造する、というのがインド哲学の考え方です。

この永遠に続く時間のサイクルの中では、1年も10年もたいした違いはないのでしょう。
ましてや30分、1時間なんてインド人にとってはこだわるほどの時間ではないのかもしれません。

このようないつからとも知れない時間的感覚がインド人の遺伝子には刷り込まれていて、
それゆえに今でも「インド時間」が続いているのかもしれませんね。

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Author:は〜てぃ
インドにかかわること十数年。
HP「天竺迦羅倶利庵」管理人。

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どうか、お付き合いくださいませ。

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